抵当権は、住宅ローンなどで支払いができなくなった場合に備え、土地や家屋の売却をしてその代金を回収する権利です。
抵当権の分野は毎年出題される分野です。
まずは用語から整理しておきましょう
抵当権の設定
抵当権は、抵当権設定者との抵当権を設定する旨の合意だけで成立し書面は不要です。
ただし、第三者に対抗するには登記が必要です。
被担保債権が成立時抵当権が成立し、被担保債権が消滅したら抵当権も消滅します。
住宅ローンを組んだら抵当権が成立し、住宅ローンの返済が終わったら抵当権がなくなるということです。
抵当権の効力
債務者が複数から債務を抱えており後順位抵当権が設定され抵当権を実行した場合、抵当権者が利息やその他の定期金を請求するときはその満期となった最後の2年分の利息のみ優先的に弁済を受けることができます。
ただし、後順位抵当権者等がいない場合には利息について制限はありません。
抵当権の範囲は、目的物の付加一体物(建物以外の目的物と一体のもの)に及びます。また、反対の意思表示がない限り抵当権設定当時に存在していた従物(畳や建具など)にも及びます。借地に家を建てた場合は、その借地権にも及びます。
物上代位
物上代位とは、抵当権の目的物が売却、賃貸、滅失、破損によって、その物の所有者が金銭などを受ける請求権を取得した場合、抵当物権の上に請求権を及ぼすことです。
例えばAさんはB銀行から住宅ローンを組み不動産を抵当権に設定されます。数年後火災により抵当不動産がなくなった場合、B銀行は抵当不動産を失うわけです。B銀行は残りのローンの返済分を取り戻さなければならないので、Aさんの請求する保険金(保険金が支払われる前に)などを差押えることができます。
物上代位の対象
- 保険金
- 損害賠償請求権
- 売却代金債権
- 賃料債権
があります。
被担保債権が譲渡された場合でも抵当権者は物上代位することができます。
賃料債権を差し押さえた場合でも、補えない部分は敷金の充当によりその限度で消滅し賃借人は抵当権者に対抗できます。
抵当権の侵害
抵当権は、抵当権設定者がその抵当物を自由に使用・収益することができます。
ただし、抵当物の価値を下げる行為は被担保債権を回収できない恐れがあるので、抵当権の侵害に当たります。
抵当権を侵害された場合、抵当権者は以下の措置をとることができます。
- 侵害行為差止請求
- 返還請求
- 不法占有者に対する明渡請求
- 不法行為に基づく損害賠償請求権
複数の抵当権が設定された場合
目的物に複数の抵当権者がいた場合は、抵当権の登記の順位によって決まります。先順位の抵当権が消滅した場合、後順位の抵当権者の順位が上昇します。また、順位は抵当権者の合意(利害関係を有する者は承諾)によって変更することができます。順位の変更は登記しなければ効力は生じません。
抵当権の実行
抵当権の実行は、債務者が弁済期がきても弁済がない場合、抵当不動産を売却し、その売却代金から優先弁差を受けることができるものです。
住宅ローンを組んで支払いがなかった場合、銀行が、その不動産を売却してお金を回収しますよということです。
抵当権消滅請求
抵当権消滅請求とは、第三取得者が抵当権者の意思によって任意売却されないように、抵当権者に対し自ら代価を評価しその価額を持って抵当権の消滅を請求する制度です。
抵当権消滅請求期間
抵当不動産の第三取得者は、抵当権の実行により差押えの効力が発生する前に、抵当権者に対して、書面を送付して抵当権消滅請求をしなければなりません。裁判所の許可の必要はありません。
抵当権消滅請求された場合は、抵当権者は書面の送付を受けた後2か月以内に抵当権を実行して競売しなければなりません。2か月以内に抵当権の実行がない場合は、第三取得者がその書面に記載した代価または金額を承諾したものとみなされます。
抵当権消滅請求ができない人
- 主たる債務者
- 保証人
- 承継人
抵当権と賃借権
抵当不動産の持ち主から賃借し住んでいる場合もあります。そんな場合、どうなるのでしょうか。
対抗するには物件の対抗関係と同じく先に登記したほうが有効となります。
抵当不動産後に賃借権登記と賃借権が不利になります。よって、抵当不動産が抵当権実行され、第三者に競売された場合対抗できません。
第三取得者が賃借を認めないといった場合、6か月間の猶予が与えられ明け渡ししなければなりません。
先に登記した抵当権者が賃借権の存続を合意した場合は、同意を登記することで抵当権者に対抗することができる。
抵当権の処分
抵当権の処分は、債権者が債務の資金を回収を終えたり、債権の借り換えがあったり、転抵当(抵当権をほかの債権の担保とすること)したりする場合に用いられます。
抵当権の譲渡
抵当権の譲渡は、抵当権者から抵当権を有しない債権者に対してその利益のために行われます。
譲受人は、譲渡人の抵当権の被担保債権額の範囲と順位を取得できます。
抵当権の放棄
抵当権の放棄は、抵当権者から抵当権を有しない債権者に対してその利益のために行われます。
抵当権を放棄した者と放棄の利益を受けた者は放棄したものの抵当額を債権額の比例に応じて分配されます。
抵当権の順位譲渡
抵当権の順位譲渡は、先順位の抵当権者から後順位の抵当権者の利益のために行われます。
譲受人は、抵当権の全額の弁済を受けることができます。その後譲渡人は残額を取得することができます。
抵当権の順位放棄
抵当権の順位放棄は、先順位の抵当権者から後順位の抵当権者の利益のために行われます。
抵当権を放棄した者と放棄の利益を受けた者は放棄した者は同順位となり、抵当額を債権額の比例に応じて分配されます。