売主の担保責任とは、売買契約の目的物に問題がある場合に、買主が予想しなかったような損害を受けないように、売主に課せられた特別の責任のこと。
担保責任の種類は、
- 他人の物を売ってしまった場合
- 一部が他人のものだった場合
- 他人の権利がついていた場合
- 抵当権がついていた場合
- 数量が不足していた場合
- 隠れた瑕疵があった場合
の責任があります。
売主に責任を追及できる方法は、
- 損害賠償請求
- 減額請求
- 契約解除
それぞれどんな状況でどのような場合に売主に責任を追及できるのか学習しましょう。
担保責任の規定
売主の担保責任に関する規定は任意です。
個人売買の契約は担保責任期間を3か月以内とする特約を定めるのが一般的です。
売主が担保責任を負わない旨の特約は無効となります。
全部他人物売買
不動産の売主は買主に対して移転する債務を負います。他人の物を売買しようとした場合も同様です。
他人の物を取得できなかった場合、買主に対して担保責任を負います。買主は善意・悪意問わず契約の解除をすることができ、善意の場合は損害賠償請求をすることができます。
一部他人物売買
一部他人売買の場合は売主に対して買主は善意・悪意問わず減額請求をすることができます。また、代金の減額請求や契約の解除を行使した場合、買主(善意のみ)は売主に対して損害賠償請求をすることができます。
善意の買主は、売主の権利移転ができない事実を知った時から1年以内に行使しなければなりません。
悪意の売主は、契約時から1年以内に行使しなければなりません。
数量不足の場合
土地を買ったけど買った面積より狭かった場合や一部がなくなっていた場合。
善意の買主は、契約の解除・代金減額請求・損害賠償請求ができます。権利移転をすることができない場合は、事実を知った時から1年以内に行使しなければなりません。
悪意の買主は、事前に数量が不足しているということを知っていたのですべてできません。
他人の権利がついていた場合
善意の買主は売主に対して、損害賠償請求ができます。また、目的を達成できない場合は契約の解除をすることができます。いずれも権利の行使は事実を知った時から1年以内になります。
悪意の場合は、契約時に知っていて契約したのでいずれの行為もすることができません。
抵当権がついていた場合
買主が目的物の所有権を失ったり、抵当権消滅請求権を行使して所有権を保存した場合のみ、善意・悪意問わず買主は、損害賠償請求や契約解除をすることができます。
隠れた瑕疵があった場合
構造上の欠陥があるものを購入した買主は売主に対して損害賠償等の請求をすることができます。
瑕疵担保責任を追及するためには、目的を達成することができない場合は契約を解除することができます。
目的を達成することができそうな場合は、損害賠償請求ができます。
瑕疵担保責任が有効なのは、善意無過失の買主に対してです。
契約解除や損害賠償請求は瑕疵を知った時から1年以内に行使しなければなりません。
まとめ
状況 | 買主 | 契約解除 | 損害賠 償請求 |
代金減 額請求 |
請求権行使 期間の制限 |
全部他人売買 | 善意 | 〇 | 〇 | × | |
悪意 | 〇 | × | × | ||
一部他人売買 | 善意 | 〇 | 〇 | 〇 | 知った時から1年 |
悪意 | × | × | 〇 | 契約時から1年 | |
抵当権等の制限が あった場合 |
善意 | 〇 | 〇 | × | |
悪意 | 〇 | 〇 | × | ||
地上権等の制限が あった場合 |
善意 | 〇 | 〇 | × | 知った時から1年 |
悪意 | × | × | × | ||
指定数量より 少ない場合 |
善意 | 〇 | 〇 | 〇 | 知った時から1年 |
悪意 | × | × | × | ||
隠れた瑕疵が あった場合 |
善意 無過失 |
〇 | 〇 | 〇 | 知った時から1年 |
悪意 有過失 |
× | × | × |
〇:できる ×:できない
できるかできないか実際の場面を考えながら解くとわかりやすいです。よく出題されるので確実に覚えておきましょう。